大判例

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東京高等裁判所 昭和62年(ネ)2353号 判決

ところで、抵当権者は、目的物(抵当物件)の交換価値を支配することによって債務者に対する被担保債権を保全するものであるところ、被担保債権が抵当権によって常に全額満足されるとは限らないのであるから、右全額の満足が得られない高度の蓋然性が認められる場合には、抵当権者であっても右債権者代位の方法により被担保債権を保全する必要性があるというべきである。また、解除判決の確定によって賃借人の占有は不法占有となり、目的物の所有者たる債務者は賃借人に対し所有権に基づく明渡しを求めることができ、右明渡しの履行によって債務者の一般財産である目的物の保全が果されるものであるから、右所有者の明渡し請求権を債権者において代位行使する利益がある(解除判決の確定後は、不動産競売手続において、賃借人に対する不動産引渡し命令が発せられうるものではあるけれども、不法占有それ自体が、なお、目的物の売却価額を低下させるなどして債権者に不利益を生じさせる原因ともなりうるのであるから、目的物についての不法占有者を予め排除することは、債務者の一般財産確保に資するところというべきである。)。

しかして、先に見たところによれば、本件においては、被控訴人の控訴人鈴木に対する被担保債権が全額満足されない高度の蓋然性が認められ、また、控訴人鈴木には、現在本件建物及びその敷地以外には何ら見るべき財産がないことは当事者間に争いがないから、控訴人鈴木は被控訴人に対する本件債務を完済する資力を有しないものと推認されるうえ、本件弁論の全趣旨に徴すれば、右解除の判決が確定しても、控訴人山岸が直ちに本件建物の明渡しに応ずるとは認め難いから、被控訴人は、控訴人鈴木に対する前記債権を被保全債権として、所有者である控訴人鈴木に代位して、控訴人鈴木の所有権に基づき控訴人山岸に対し、右判決の確定を条件として、予め被控訴人に対して本件建物を明け渡すよう求めることができるものと解するのが相当である(不動産明渡しの強制執行は、執行官が債務者の目的物に対する占有を解いて債権者にその占有を取得させる方法により行われるが、それは、債権者又はその代理人が執行の場所に出頭したときに限り、なしうるとされているところ(民事執行法一六八条一項、二項)、右にいう債権者とは、債務名義上目的物を受領すべき者として掲記された者をさすと解されるから、本件の場合、被控訴人が、控訴人鈴木に対し明け渡すよう求める旨の予備的請求しか認められないとすると、右債権者にあたる控訴人鈴木又はその代理人が目的物の受領のために出頭しない限り、本件建物の明渡しの強制執行をすることができないこととなり、また、たとい控訴人鈴木又はその代理人がそれを受領したとしても、直ちに他へ賃貸するなどしてあくまで執行妨害に出ることもありうるのであり、そして、本件弁論の全趣旨に徴すると、本件の場合、控訴人鈴木又はその代理人が、右受領のため出頭するか疑問であるうえ、右執行妨害に出ないとも限らない状況であると認められるから、被控訴人は、債権者代位に基づき、控訴人山岸に対し、本件建物を直接自己に対して明け渡すよう求めることができるものと解するのが相当である。)。

(村岡 鈴木 滝澤)

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